パーキンソン病に対し理学療法士ができること QOL(クオリティオブライフ)を向上させよう!
みなさん、こんにちは! AOYAMA STYLE(アオヤマスタイル)の青山遥(アオヤマヨウ)です。
約12年間の総合病院での理学療法士としての臨床経験をベースに、練馬区豊島園で理学療法サロンAOYAMA STYLE(当初の店名は「mamasalon aoyama(ママサロンアオヤマ)」でした)を営んでおります。
2021年8月から、知人の紹介でパーキンソン病の患者さんたちの通うデイケアの現場で、月2回、施術する機会をいただきました。約半年間ほど通わせていただきました。
パーキンソン病は日本では人口10万人あたり100~150人ほどの患者さんがおられるとされてる、脳の難病です。
中高年期以降に発病するケースが多く、最近では、みのもんたさんが罹患したと告白し、ニュースにもなりました。ハリウッドスターのマイケル・J・フォックスさん、タレントの永六輔さん、芸術家の岡本太郎さんなどもパーキンソン病の患者であることを公言なさっておられます。
病院とデイケア「生活機能障害度」の違い
パーキンソン病は、神経細胞の進行性変性疾患です。病気の進み方次第で、振戦(=手足の震え)、無動(=動けない)、固縮(=固まる)、姿勢反射障害(=姿勢を変えるのが困難)といった4大症状が出現してくることが多いです。
病気の進行度を示す指標として、『Hoehn & Yahr(ホーン・ヤール)の重症度分類』や『厚生労働省の生活機能障害度分類』が広く使われております。
Hoehn & Yahrの重症度分類
Ⅰ度 | 体の片側だけに手足のふるえや筋肉のこわばりがみられる。体の障害はないか、あっても軽い。 |
Ⅱ度 | 両方の手足のふるえ、両側の筋肉のこわばりなどがみられる。日常の生活や仕事がやや不便になる。 |
Ⅲ度 | 小刻みに歩く、すくみ足がみられる。方向転換のとき転びやすくなるなど、日常生活に支障が出るが、介助なしに過ごせる。職種によっては仕事を続けられる。 |
Ⅳ度 | 立ち上がる、歩くなどが難しくなる。生活のさまざまな場面で、介助が必要になってくる。 |
Ⅴ度 | 車いすが必要になる。ベッドで寝ていることが多くなる。 |
厚生労働省の生活機能障害度分類
Ⅰ度 | 日常生活、通院にほとんど介助がいらない。 |
Ⅱ度 | 日常生活、通院に部分的な介助が必要になる。 |
Ⅲ度 | 日常生活に全面的な介助が必要で、自分だけで、歩いたり、立ち上がったりできない。 |
病院勤務時代にも、パーキンソン病患者さんのリハビリに携わっていましたが、上記の『Hoehn & Yahrの重症度分類』でいうとⅣ〜Ⅴ度、『厚生労働省の生活機能障害度分類』でいうとⅢ度の病気の進行度が進んでいる方のリハビリがほとんどでした。
今回、知人からご紹介いただいたデイケアに通われている方々は、Hoehn & Yahrの重症度分類ではⅠ〜Ⅲ、生活機能障害度分類ではⅠ〜Ⅱ程度で、比較的軽症、パーキンソン病特有の厄介な症状はあるが、日常生活動作は自立して行えている方々でした。
大切なのはリハビリに入るタイミング?
今回、様々な症状を抱えられている患者さん、デイケアの利用者さんのリハビリ・施術をさせていただく中で、理学療法士の自分ができることがかなり明確になってきました。
脳疾患であるパーキンソン病を治すことはできないけれど、パーキンソン病による4大症状である振戦、無動、固縮、姿勢反射障害からくる二次的障害に対しては改善、予防できることがある。
そして、それはパーキンソン病だと診断されて、すぐに関わることができれば、より効果的であるということです。
病院勤務時代では、進行度が高く、日常生活に全面的な介助が必要な患者さんのリハビリが多かったので、パーキンソン病特有の症状が、リハビリを難渋させていました。要するにリハビリをしようにもできないほどの状態だといえます。
重症患者さんに対しても、理学療法士としてできることはもちろんありました。パーキンソン病は手足のふるえだけでなく、筋肉・関節が固まってしまう特徴があります。人間は歩くだけでも多数の筋肉を用いますから、筋肉が固まっていると動作がしづらく、歩行がすり足のように足裏が床から離れず、小刻みになったり、方向転換がうまくできずに転んでしまったりするのです。
二次的障害による「生活への支障」を防ぐためには…
少しでも関節可動域を広げる努力をしたり、筋肉をしっかりと使えるようにすることで、自身で動かすことができる幅が広がり、日常生活での介助量の軽減などに貢献できてはいたと思います。
そして、今回、デイケアの現場で約20名の利用者さんの施術をさせていただい二次的障害た時に強く感じたことは、パーキンソン病による症状以上に、パーキンソン病の二次的障害の方が日常生活に支障をきたしている印象を受けました。
パーキンソン病の二次的障害とは、関節の可動域が制限されたり、筋力が低下すると共に体力や活動性がなくなり、生活動作が十分にこなせなくなることです。
また、パーキンソン病には特有の首を前に突き出した、前かがみの姿勢があるのですが、早い段階から施術を行うことで、ある程度までは姿勢を治す事ができ、腰痛、肩こりといった痛みを取り除けるため、日常生活動作の質の向上が認められました。
施術できるタイミングが早ければ早いほど、二次的障害を防ぐ効果が高くなるだけでなく、重症化の予防効果も上がる傾向があったと思われます。
ただ、理学療法士としては振戦、無動、固縮といった症状は残念ながら、お手上げです。しかし、その症状のせいで歪んでしまった姿勢は治せそうです。普段、難病の患者さんにまとまって接する機会を得たことで、理学療法士として自分ができることと、できないことの境界線がはっきり引けるようになったと思います。
生活の質を上げるために、どう行動する?
もちろん先述のとおり、パーキンソン病の特有の症状がすでに強く出てしまっている方にも理学療法士としてできることはあるのですが、現況、病院で理学療法士がパーキンソン病の患者さんにかかわるタイミングは、往々にしてすこし遅すぎたのではないか……というようなことを感じた次第です。
AOYAMA STYLE(アオヤマスタイル)で他の症状の患者さんに施術している時にも、やはり症状が軽いうちに関わることができた方は、早く元気になられます。
21世紀を迎えても医学の進歩は、まだまだ完治させられない病気のほうが多いという状態で止まってしまっていますが、治せる・治せないに囚われすぎず、不快な症状をできるだけ取り除き、身体をラクにすることで、その方のQOL(クオリティ オブ ライフ / 生活の質)を上げることができます。
それだけはどんな病気、症状にも共通なのだな、と感じました。
- 今日
- 今週
- 今月