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[3]【訪問リハビリ勤務時代】高頻度で慢性的な施術は「健康でありつづけたい」という自立心を妨げる

みなさんこんにちは、AOYAMA STYLEの青山です。

都内の総合病院などで理学療法士として勤務した後、2020年、練馬・豊島園の地でAOYAMA STYLEを開業しました。

私の理学療法士としての経験と、”志(こころざし)”を語らせていただく「私の履歴書」シリーズ3回目の今回は、在宅リハビリ(訪問リハビリ)に勤務した時代の経験をとりあげたいと思います。

前回の記事
[2]【リハビリ専門病棟編】病後のADL回復度合いは病前の動作パターンで決まる

みなさまやご家族の方々の快適で健康な生活にすこしでも役立てれば……と思いますので、どうかお付き合いください。

とある都内の総合病院に理学療法士として入職した私は内科病棟で3年、次にリハビリ専門病棟で3年働き、その次は在宅リハビリ(訪問リハビリ)部門で3年働くことになりました。

「訪問リハビリ」とは一体、どんなサービスなのでしょうか?

病院における医療保険を利用した医療サービスではなく、『介護保険』を利用したどちらかというと、身体機能の維持を目的としたリハビリ・サービスだといえるでしょう。

前回もお話した、リハビリテーションの主な3つの形態のうち

1急性期リハビリ急性期=命の危険もある患者さんへの他の医療行為と並列しておこなうリハビリ
2回復期リハビリ少しでも以前のような日常生活に戻るための、より実践的なリハビリ
3維持期リハビリ在宅生活の患者さんが日常生活で、より身体的な問題を感じにくくするためのリハビリ

上記③に相当します。

この訪問リハビリの3年間で私が学んだことは

  • 日々の習慣・家屋環境を少し(ただし適切に)変えるだけで、身体は大きく変わる
  • 介護する側が意識して行うケアで、介護される側の利用者さんは大幅に良くなる。
  • 維持期のリハビリは、あまりに多くの回数をおこなうのは望ましくない。

ということです。

最後の3つ目は少し意外かもしれませんね。しかし、あまりにリハビリ実施頻度を高くしてしまうと、利用者さん、そしてご家族の理学療法士への依存度が高まってしまい、お金と時間を使ったにもかかわらず、良くなったという実感に乏しい。そんな寂しい結果が出てしまうのです。

リハビリ=慰安のためのマッサージのように考えてしまう方々もおられ、自分で治そう、少しでもよくなろうと考えない。そうなってしまうと良くなる症状も良くならないのでした。

訪問リハビリでの「カルチャーショック」

訪問リハビリとは、いわゆる維持期のリハビリのことです。この部署で働き始めた私が受けた一番のカルチャーショックは『良くならない』という事実でした。

リハビリ入院する患者さんは、基本的には良くなるための”伸びしろ”がたくさんおありです。

入院するのは症状が重いからですが、入院して集中的に医師や理学療法士のケアを受ければ、症状が改善する可能性がある。だからこそ入院したともいえるのです。

リハビリもやる側の技術で違いは多少出てくるものの、患者さんにまじめに受けていただければ、それなりに症状は改善されるのでした。

しかし……この訪問リハビリというジャンルは若干特殊といえるのです。対象者のことも『患者さん』ではなく、『利用者さん』と呼ぶのが医療業界の暗黙の了解なのですが、この言葉遣いにも空気の”違い”を感じ取っていただけると思います。

利用者さんには健康状態がよろしくない高齢者の方が多く、「改善」が大きく期待できないから「維持」が精一杯。入院患者さんとくらべ右肩上がりの回復も期待できません。

「身体機能の悪化を、あくまで緩やかにするだけ」ともいえる分野なので、正直、最初はきつかったです。

でも、本当にきつかったのは「良くならないこと」ではありませんでした。

この時点までで、約6年間病院に理学療法士として勤務し、患者さんをなんとか少しでも良くしようと技術を磨き、切磋琢磨してきた私は、たとえ維持期の方であろうと、ある一定の水準までには回復させることができました。
回復度は人それぞれですが、週1回程度の関わりで、長くても半年間いただければ何かしらの改善はできたと自負しております。

「もう良くならない」とあきらめモードの利用者と向き合うツラさ

しかし、「きつかった」のは、維持期のリハビリには「終わりがない」という事実でした。

「終わりがない」こと自体が悪いわけではありません。パーキンソン病や脊髄小脳変性症などの進行性疾患や、重度の寝たきりの利用者さんには継続的なケアが必要でしょう。

私がつらかったのは、「もう良くならない」とあきらめモードの利用者さんの姿勢に接し続けなければならないことでした。リハビリに対しても過度に受動的で、依存的……はっきりいうと、リハビリ=安楽マッサージという価値観の利用者さんたちに向かい合わねばならない時は、非常にしんどかったですね。

たとえどんなに重たい疾患であろうと、理学療法士として関わり、リハビリを行う以上はその方のADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)とQOL(Qualities of Daily Living:生活の質)の向上を図りたいと私は感じるのです。

しかし、やはりそこにはご本人の「良くなりたい!」という『想い』がないと、リハビリはその場だけのものになってしまいがち。日常生活で効果が見られないのです。

そして、この問題には利用者さんのご家族の影響も大いにあると感じました。

改善しにくい訪問リハビリ「利用者さん」の特徴

例えば……

脳梗塞を発症した患者さんが、病院でのリハビリを経て、退院後に訪問リハビリをスタート、定期的なケアへと移行するケースは良くあることです。

訪問で行われるリハビリは、実際の家での生活が安全に過ごせることに配慮して行われ、主な生活動線をカバーするべく、家屋の調整や歩行練習、日常生活動作の練習がメインとなります。さらにご家族=利用者さんの介助者への介護指導なども行います。

適切な動作指導や日常生活で行えるセルフケアの知識を、利用者さんと介護者で共有できたケースでは、利用者さんのADLやQOLを大幅に維持改善しやすいです。そういう例をたくさん見てきました。そのタイミングで訪問リハビリを『卒業』していただき、自分の身体を自力でケアできる状態にまで持って行けたこともあり、これはとても良い経験になったと思います。

それと真逆なのが、先程も少しお話した『リハビリ依存』になってしまうパターンです。これは、なにも訪問リハビリだけに限った話ではないのですが、ある一種のマッサージなどの手技に依存的すぎる人はあまり改善を見せてくれません。

巷に乱立する格安マッサージ屋さんを渡り歩く人たちも同じことが言えるのですが、もし、その人たちのつらい症状の原因が、たんなる筋肉疲労などではなく、なにか身体的な原因がある慢性痛や不定愁訴だったとしたら、その場しのぎの気持ちよさを求めるだけで根治することはありません。

クイックマッサージが「悪」というわけではありません。しかし、それだけでは治らない症状には原因というものがあり、それに向かい合う必要があるということを知っていただきたいのです。

結局、最後に治すのは自分とその意思です。治りたいという『想い』を正しい方向にむけるお手伝いをすることが理学療法士の一番の仕事であり、リハビリの目的なんですね。

訪問リハビリを「卒業」、自分で自分の体をケアすることができた利用者さんとご家族には、

  • 「良くなりたい」
  • 「不調の原因を知って克服したい」

という強い想いがありました。それゆえ、私も適切な提案ができたし、みなさんと一緒の目標に向かって歩むことができたのです。

独立後、開業した私のママサロンに来るお客様についても同じことが言えます。やはり根本的な改善を望む方だけが残り、その場かぎりの安楽さを求める方は去っていきます。たしかに、街のマッサージ屋さんのように、ママサロンはその場の限りの安楽さを提供する場所ではないということなのでしょう。

私自身も、マッサージを受けると「とても気持ちがよい」と思うし、また通いたいという気持ちが出てくることは知っています。

しかし、それだけに溺れてしまうことは『もったいない』と感じる場面が多々ありました。日常生活をちょっと工夫するだけで、たとえば、たった1つのセルフケアを足すだけで、もう少し姿勢を良くするだけで、もっとADLは良くなるんだけどなぁ……と。

しかし、ご本人がそれを望んでいない以上、それ以上のことはしてあげられないのでした。

訪問リハビリ勤務の3年間で学んだこと

訪問リハビリ時代にお話は戻りますが……

自分の症状に積極的に向かい合った利用者さんや、それを支えたご家族のいる家庭では週1回のリハビリが、月1回に減っていきました。また、セルフケアできるようになった利用者さんを見れたことは私にとっても、大きな学びとなりました。

本気で求める方のために、しっかりとした知識と技術で応えられるようにしておく必要があり、それは今のママサロンの経営姿勢にも根付いていると感じます。

逆に、そこまでの成果を望んでいない方にもこちらの熱意を押し付けるのではなく、その方に必要なものを提供していく中で、様子をみるというバランス感覚も学ぶことができました。

ママサロンでは『卒業』を前提とした施術を行っています。それがお客様にとって一番良いと判断したからです。もちろん、その方の人生に末長く関わってはいきたいのですが、前述の通り高頻度で、しかも慢性的な施術を行うことはお客様の依存度を上げるだけで、「健康でありつづけたい」という自立心を妨げるのです。

自分で治せるものが治せなくなり、施術だけに依存し続け、本当の意味での改善の可能性を消してしまうことになるのです。

実は「リハビリテーション」とは近年生まれた造語で、その語源はラテン語で​​『re:再び』、『habilis:人間らしい、できる』という単語を組み合わせてできています。『再び人間らしく生きる、再びできる』という意味を持っています。

『人間らしく生きる』とは何か。

自分で考え、自分で選択し、自分で行動することであると僕は思います。さらに理学療法士として付け加えるなら、自分の人生を生きるための大切なツールとして、自分の身体とどう向かい合うか。という問題もありますね。

最後は自身の『想い』なのです。その想いに、あなたの身体はついて来られるか?

自分で考え、選択したことを行動にうつせる身体であるか?

そのためにはまずは健康でいなければなりませんよね。

健康とは不快な症状がないとか、健康診断などの数値だけで証明できるものではありません。むしろ、自分の想いを考えを行動に移せる人こそが、本当の意味で健康だといえるのではないでしょうか。

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