10年前の自転車事故の痛みが、筋トレで再発した方を改善させるまで
みなさん、こんにちは! 理学療法士の青山遥(アオヤマヨウ)です。
約12年間の総合病院での理学療法士としての臨床経験をベースに、練馬区豊島園で理学療法サロンAOYAMA STYLE(当初の店名は「mamasalon aoyama(ママサロンアオヤマ)」でした)を営んでおります。
「快適な生活は正しく食べて、正しい姿勢から!」をモットーとして、姿勢の修正や運動療法(いわゆるリハビリ)、そしてその方の職業や生活にあったセルフケア指導を行うことで、お客様に元気になっていただくお手伝いをしております。
本日は、その方の了解を得た上で、膝の痛みで来店された男性のお話をします。
事故や怪我による「古傷のぶり返し」とその影響
この方は、10年前の自転車事故で損傷した膝の古傷が、過度な筋トレや、なれないピラティスを行っていく中で再発してしまったのでした。理学療法士として見過ごせない点は他にもありまして、この方はその10年前の事故以来、損傷した膝を「かばって歩くクセ」がついてしまっていたのです。実際、これがかなり大きく影響していました。
体型・体質改善を目指し、30代以降になって、これまでの人生の中ではあまり経験がなかったウェイトトレーニングやピラティス、ヨガなどを始められる方が増えています。しかし、そうしたトレーニングを始めたから、健康になれたとか、見た目が良くなっていったという道のりを、何の支障もなく歩める方ばかりではありません。
このページにたどり着いた中にも、この方のように忘れていた古傷の痛みがトレーニングでの故障をきっかけにブリ返し、それに悩まされている方が多くいらっしゃるのではないか、と想像します。それがたとえヒザの痛みではなくても、この記事が今後のご自分のトレーニング人生を考える上で何かの参考になるかもしれません。ぜひ最後までお読みくださいね!
まずは身体の「評価」して原因や問題を探ります
さて、この方は、左膝の裏から外側までの部位に、運動時に激しい痛みが走るので、ご来店なさいました。一番の痛みは膝裏、2番目が外側といった感じです。
理学療法士としてこの方の身体を「評価」(=分析)してみると、左足の『膝窩筋』と『外側側副靭帯』に問題が出ていることが判明。
疼痛発症までの経過を聞いてみると、前日までにピラティスを行い、殿筋群(お尻の筋肉)のレッスンを受けていた。その時にも膝の筋肉も過度に働いていた感覚があったとのこと。また、スポーツジムで、ブルガリアン・スクワットを行った後、ハッキリと「故障した」という感覚があったとのこと。
姿勢も「評価」させていただきましたが、それらをまとめると、
①左膝は立位時に過伸展(膝の伸展角度が0度を超える)しやすい
②そのため膝の本来の機能が十分に発揮されず、負荷が偏る。今回は『膝窩筋』と『外側側副靭帯』に集中してしまったようです。
③左膝にかかる負担を庇うかのように全身が歪み、それが日常化してしまっている。
④故に、普段の生活であればなんとか庇いきれていたが、今回のハードなスクワットと慣れないピラティスをしたことがきっかけとなって、『膝窩筋』と『外側側副靭帯』にさらなる負担がかかり、傷めてしまったので、激痛が走った。
……といった原因と経過がわかりました。
一般的な整形外科を受診すれば、たぶん消炎鎮痛剤を処方され、「痛みが治るまで安静にしてくださいね〜」といわれる「だけ」だと思われます。
しかし、それだと根本的な解決には至りません。
お客様の望みを考慮し、根本的な治療法を考えます
今回のお客様の治療で大切だと理学療法士としての私が考えたのは、トレーニングが趣味というこの方のために、ハードなスクワットやピラティスをしても大丈夫な身体に、現在の状況からアップデートして差し上げなくてはならないということでした。
要するに、ハードなスクワットと慣れないピラティスをやってしまったことが原因だから、そういうのはやめてくださいね~、とか、そういうのは控えめにしましょう~、という場当たり式でおざなりな結論を出すだけでは、この方のためにならないということです。
この方の場合、10年前の自転車事故まで遡って、治療していく事が大切となりました。
言い換えると、10年前から続いている左膝を庇って歩く、そのために長い期間かけて歪んでしまった姿勢の改善・アップデートこそが、このお客様にとっては根本的な治療にほかならないのです。
左膝を庇った姿勢を取り続けることがなぜいけないのでしょうか? それによって左側の骨盤は自然に後傾してしまうからです。
すると左側に傾いた骨盤の動きに伴い、左足首も内反しやすくなってしまいます。たかが姿勢の歪みと思うかもしれませんが、「それだけ」で身体の全身の歪みが大きく助長されてしまいます。通常なら人間は、寝ている時以外、全身で「重力」というファクターに抵抗しているのですが、それが難しくなります。ぜんぜん気づいていないのが当たり前ですが、重力の影響は大きいです。歪んだ身体にとっては、うまく重力をハネ返せないことで、じわじわと局所的に負荷が集中し、それがさらに悪影響を及ぼしてしまうのです。
また、歪んだ骨盤には歪んだ背骨が乗ることになります。これが腰痛の原因です。実際、このお客様の場合も腰痛があり、そこが起きているのが背骨が歪んでいる位置と一致していました。
施術&必要なセルフケアの勧め
姿勢の歪みについては、セルフケアのみでの改善が難しいと見込まれ、施術にて修正することになりました。
そして、この方の場合、いっそう大切になるのが毎日のセルフケアの実行でした。単純にトレーニングといわれるものをしていれば、それが身体にとってベストなセルフケアになるわけではありません!
さきほどご説明したとおり、この方の場合、ピラティスで殿筋群(お尻の筋肉)のレッスンを受けたものの、身体が歪んでしまっていることが原因で、普通なら過度に働くはずもない、膝の筋肉が過度に使用されてしまったのでした。
ウェイトトレーニングにしても、ピラティスにしても、殿筋を強化したいのであれば、殿筋だけがきちんと独立して働かせることが大切であり、大前提となってきます。
そして、それが出来た上で、殿筋と膝周りの筋が連動して働くようになる事が理想なのです。『ヒップアップのセルフケア』を指導させていただきました。また、膝と殿筋がきちんと協調して働く筋の動きを促すため、『膝裏タオル潰し』も指導させていただきました。
身体のどこかを集中して鍛えるのがトレーニングの目標ですよね。狙った箇所だけでなく、負荷があちこちに分散してかかっているなら、しんどい思いをするのは同じでも、効果の出方が格段に薄くなってしまうことは避けたいものです。
さらに効果的なサポーターのご提案
このお客様の場合は、日々の筋トレが、多忙で神経をすり減らすお仕事のストレス軽減に大いに役立っているとのことでした。ウェイトトレーニングやピラティスを続けていけることが最大のご希望でしたから、痛みから解放される=キズが治り、正しい姿勢を自然と取れるようになるまで……つまりボディイメージがちゃんとアップデート完了するまでは、エクササイズ時に指定の膝サポーターを付けていただくことに決めました。
実はこちらのお客様は薬局で売っているサポーターをすでに購入なさって、装着なさっていましたが、それで膝の痛みはまったく改善されていませんでした。
一口に膝用のサポーターと言っても様々な種類があるのです。そして症状によって効果が全然違うのです。
このお客様の場合、運動時の外側側副靭帯の負担を減らす事が第一優先事項だったのですが、購入されたサポーターはそれに適していませんでした。側方動揺を補完してくれるサポーターに変更してもらう事で、動いたときに襲ってくる膝痛は、それだけで治まりました。
あとはサポーターをつけなくても痛みが完全に治り、正しい姿勢にボディイメージがアップデートされてくれれば、サポーターつきの人生から自由になれることはもちろん、以前以上にウェイトトレーニングやピラティスを楽しむこともできるでしょう。ブルガリアンスクワットも再開できますね!
特に大切なのは初回診療での『問診』
今回の件もそうですが、その方の痛みの根本的な原因が、意外なところにあるケースは多いのです。ですから、『問診』は、とくに初回の診療の中でいちばん大切な部分になってきます。
過去の故障が、その大小かかわらず、現在も姿勢の歪みとして残り続けていることは多々あります。スポーツ外傷だけでなく、事故で負った怪我の部位は完治しても、そのときの姿勢の名残が5年後、10年後……と何かしらの形で現れる事があるんです。
それゆえ、当サロンにいらっしゃった時はもちろん、医療関係者に身体の支障を相談するなら、『問診』の時、とにかく些細な事でもいいので「この痛みはもしかしたら、あの時の……』などと思い当たることは何でもお話になるのが得策です。それを聞き出すことで、今後の治療の進み方が抜群に早まる可能性がありますし、そうでなくても、対策に活かせることは多々あるわけですから。
なので、「これは関係ないかな」とは自己判断してしまわず、気になっていることはなんでも「この痛みはもしかしたら、……」という感じで良いので、私たち施術者にご相談いただければ、と思います!
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