[2]【リハビリ専門病棟編】病後のADL回復度合いは病前の動作パターンで決まる
みなさんこんにちは、AOYAMA STYLE(アオヤマスタイル)[旧店名:mamasalon aoyama]の青山です。
都内の総合病院などで理学療法士として勤務した後、2020年、練馬・豊島園の地でAOYAMA STYLEを開業しました。
前回からひきつづき、AOYAMA STYLE開業以前に勤務していた病院時代の私が得た理学療法士としての”気づき”を、みなさまの健康維持のためのヒントにもなるかな、とお話させていただきます。
総合病院に理学療法士と入職してから3年間は、内科病棟での勤務が続きました。これは前回お話したとおりです。その後はリハビリ専門病棟へ異動し、ここでさらに3年間働きました。
回復期リハビリ専門病棟の役割
リハビリ専門病棟というのは俗称で、正式には『回復期リハビリテーション病棟』といいます。
『回復期』とは何でしょうか?リハビリテーションは大きく分けて
1 | 急性期リハビリ | 命の危険もある患者さんへの他の医療行為と並列しておこなうリハビリ |
2 | 回復期リハビリ | 少しでも以前のような日常生活に戻るための、より実践的なリハビリ |
3 | 慢性期リハビリ(=地域リハビリ) | 在宅生活の患者さんが日常生活で、より身体的な問題を感じにくくするためのリハビリ |
の3つに分類されます。
回復期リハビリの主な目的は、患者さんのADL(Activities of Daily Living)を改善してさしあげることです。
ADL(日常生活動作)とは、食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など生活を営む上で不可欠な基本的行動を指す。
出典:wikipedia/『日常生活動作』
回復期リハビリテーション病棟(以下『リハビリ専門病棟』)にいらっしゃる患者さんは、医療ケア並びに理学療法士のケアを受けることで、入院時のADLとくらべて退院時のADLが大幅に上昇する場合がほとんどです。
いや、むしろ病棟の施設基準を満たすためにも「そうでなければならない」と言っても過言ではありません。
つまり、言い方は悪いのですが、リハビリ専門病棟というものは「施設基準を保つために、患者さんの症状を絶対に良くせねばならないノルマがある病棟」とも言えるのでした。
回復期リハビリテーション病棟(リハビリ専門病棟)の勤務時代では、回復にむかってもっとも成果が出やすい時期の患者さんがリハビリ目的で入院してきているんだという意識をして、仕事に臨んでいました。 |
さて、リハビリ専門病棟が対象とする患者さんの大半は、
①脳血管障害(脳梗塞、脳出血発症後180日以内)
②整形疾患(大腿骨頸部骨折オペ後90日以内など)
という、2つの疾患で入院された方々です。
先述の通り、入院時とくらべて退院時にはADLが向上しているパターンがほとんどなのですが、その一方で
『入院にするまでになった疾患が改善しても、ADLが上がらない=動作が良くならない患者さんが一定数いる』
という悲しい事実がある…ということでした。
このことは、リハビリ専門病棟勤務時代に私が学んだ一番のこと…といってもよいかもしれません。
脳出血で入院したパターン
例えば……脳出血で、右の手足が麻痺した患者さんが発症から30日後にリハビリ専門病棟へ入院してきたとしましょう。
入院当初は右の手足の麻痺の症状が強いため、日常生活動作は困難です。当然のようにADLは低いですよね。
しかし、麻痺の改善度に伴い、できることが増えていき、ADLはどんどん上がっていき、退院後は自宅で無事に過ごせるようになる。
……これは、疾患の回復によって退院が可能となる際、最も理想的だとされるパターンです。
ところが実際はそんなに甘くはありませんでした。
ほとんどの患者さんが、その後遺症に悩まされるのです。手足の麻痺は完全に治ることが難しく、麻痺をした手足と共に残りの人生を生活せざるをえなくなる。そんな悲しいパターンが殆んどなのですね。
しかし、理学療法士が「麻痺はもう治らない」とあきらめてはなりません。
実際、医療技術の発達や様々な徒手療法の発展により、麻痺へのアプローチは日々切磋琢磨されていますし、さまざまな研究成果を載せた文献も増えています。この分野の発展は私も大いに期待しているし、携わっていきたいと考えています。
理学療法士として、医療人として、完全な回復が困難であるという事実だけで、決してあきらめてはいけないし、さらに精進していくべきことではあります。しかし、「実際に麻痺の回復だけに焦点をあわせてしまうのも危うい」とも私は感じずにはいられませんでした。
脳出血で身体が動かなくなってしまった患者さんの身体状況は、『この前の脳出血に、全ての原因があるのではない』のです。『そういう考え方では、状況の対処ができない』ということなのです。
発症前の動作パターンがADLの回復を左右する?!
具体的にお話しましょう。
確かに脳出血の後遺症として、身体の自由が奪われてしまった。大半の原因はそう説明できるかもしれませんが、理学療法士として臨床に携わり、患者さんの身体を細かく評価、治療していく中で重要な気付きがありました。
それは、発症前の動作パターンや、姿勢や関節の歪みが、脳出血後の身体の不自由さに大きく起因しているということ。
そして、脳出血によって、”よくない生活様式”や、”身体の歪み”が助長されてしまい、ADLに深刻な支障をきたしている……そう私は確信せざるをえなかったのです。
とくに高齢での脳出血・脳卒倒などの発症後の身体の不具合には、こうした長年、身体に蓄積された”エラー”が大きく影響しているようです。
当たり前のことですが、年齢を重ねると、様々な疾患や疾患の予備軍を多く抱えてしまいがち。
それゆえ、脳の疾患が回復するだけでは身体の動きが良くならないケースが非常に多いのです。高齢で体力がないから治りづらいのではなく、日常生活の悪しきパターンが染み付いているから治りにくい。そのことが大きな問題となってくるのでした。
それでも限られた期間に、確実な結果を出さなければならないのがリハビリ専門病棟の宿命であり、そこで働く理学療法士の使命なのです。
リハビリ専門病棟勤務の3年間で得たもの
リハビリ専門病棟での勤務により、自ずと疾患だけではなく、患者さんの全体像を把握し、全身的なアプローチを用いるようになりました。限られた期間で、それもなかなか普通に取り組んだだけでは結果を出せないような現場を乗り越えてきた経験や知識、それらが現在のママサロンでも活かされていることを感じます。諦めずに奮闘しつづけた過去の自分には、「ありがとう!」というしかありません。
しかし同時に、身体が動かなくなってしまうような重篤な疾患を抱える以前に、できることはたくさんあったはずで、そのためにも『予防リハビリ』の重要性があらためて浮き彫りになった……そう痛感するリハビリ専門病棟での3年間となりました。
脳卒中もそうですが、高齢者が動けなくなる疾患のひとつに骨折があります。
そうならないことに越したことはないのですが、いざ疾患を患ってしまった時の回復度の違いは、前述のように発症前の生活パターンが大きく影響します。これはとくに大きな声でお伝えしたい事実です。
だからこそ予防リハビリは重要。そして紹介状が必要な総合病院ではなく、気軽にかかれることができる場所として「ママサロン」には存在意義がある。これからも多くの方の健康に貢献できれば……と感じている私です。
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