[1]【内科病棟勤務編】内部疾患に対するリハビリ業務で得た「正確な評価」技術と理学療法士としての限界
みなさんこんにちは、AOYAMA STYLEの青山です。
都内の総合病院などで理学療法士として勤務した後、2020年、練馬・豊島園の地でAOYAMA STYLEを開業しました。
理学療法士のお仕事については、以前のコラムでもお話させていただきましたよね(院長「青山遥」へのインタビュー)。
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理学療法士の単語を聞いたことがないという方のほうが少ないかもしれませんが、普通の方なら「整形外科で働いている人たち」くらいの認識でしょうか?
もう少し詳しい方なら、「腰痛」や「五十肩」とよばれる身体の症状……つまり筋肉や関節などに起きた問題を専門的な知識・技能に基づいて解決してくれる人たちというイメージをお持ちかもしれません。
しかし、総合病院における理学療法士の仕事は、「腰痛」などの外科的疾患にとどまりません。意外かもしれませんが「内部疾患」……つまり心臓、肺、腎臓といった内臓由来の病気にも理学療法士によるリハビリは有効だと認められており、健康保険が適用されるケースもあるのです。
日本の医学用語では内部疾患ではなく、内部障害という呼び名を使います。患者数はかなり多く、「心臓機能障害が46.3万人、腎臓機能障害が20.2万人、呼吸機能障害8.9万人、膀胱直腸機能障害9.1万人、小腸機能障害0.3万人(日本リハビリテーション医学会のホームページの記述より)」などと報告されています。
予防リハビリ(予防医学)の重要性
先述の通り、内部疾患に対するリハビリには有用性があり、それゆえに健康保険の適用になっています。しかし、そうした医療の現場で実際に働いていた私が強く言いたいのは「リハビリでできることには限界がある」という事実です。
体調不良をこじらせ、内部疾患の患者だと診断されてしまう前に、生活を改善できていたら、こんな苦しい病気にならなくても済んだケースが、かなりあると思われるからです。
本格的な病気になってしまう前に、不快な症状をストップさせる「予防医学」という言葉がありますよね。同じように「予防リハビリ」も重要だと私は考えています。
病院で行われている内科疾患に対するリハビリの有効性を否定したいのではありません。しかし、意外に見過ごされがちな、予防リハビリの重要性を今日はお伝えできたら、と思うのです。
正確な「評価」なしでは成立し得ない内部疾患患者向けのリハビリ
これは、ある内部疾患の患者さんのリハビリに携わっていた時のお話です。
その方は、慢性腎不全を抱えておられ、人工透析が必要でした。それと並行して、リハビリも行われていたのです。透析前後の血圧や水分摂取量を管理しつつ、低負荷・高頻度のリハビリが実施されていました。
ほとんどの慢性腎不全の患者さんは糖尿病や脳梗塞、人工膝関節術後などの何かしらの疾患を合併しているもので、この方のリハビリもかなり難渋していました。
リハビリと聞くと、和やかな雰囲気で手足を動かし……というようなイメージがある方もあるかもしれませんが、この方のような深刻な内部疾患の患者さんの場合は違います。本当に厳密に管理をしていかないと、
- 血圧低下による失神
- 血圧の急上昇
など、リハビリ自体を中止せざるを得ない深刻な症状が起きてしまうのです。
また、シャント手術を行ったような患者さんの場合、血管ももろくなっているため、低負荷でのリハビリ は絶対条件なのです。
まるで、針の穴に細い糸を通すような細心の注意を重ね、患者さんの病状を、理学療法士用語でいう「評価」をせねばなりません。
評価とは、これくらいの病状なら、こういうリハビリを行わねばならないという総合的な判断を下すという意味に捉えてください。
このように多くの制限がある中で、最善・最適なリハビリのプログラムを組み、期限内の退院を目指して、理学療法士は患者さんと一緒にリハビリに取り組まねばなりません。
つまり、『正確な評価』と『効率的な、もしくは燃費の良いリハビリ』こそがもっとも重要であることを私は学びました。限られた時間、限られた運動負荷量のなかで最も効率よくリハビリの効果を出す技術を学び、それらを身に付けたことは、現在の私の理学療法士としての活動のベースとなっています。
長年の不摂生が引き起こした重すぎる代償
いまでは、短時間であってもお客様の身体の正確な評価、最適な施術手段、セルフケアの提案ができるようになったので、あの時代の悪戦苦闘には大変感謝しています。
しかし……あの頃のことを思い出すたび、「どうして、あの患者さんたちは、あんな苦しい疾患にかかってしまったのだろう」とも感じるのです。
先天性の糖尿病や腎不全に苦しむ患者さんもおられますが、カルテを紐解くと、リハビリを受けねばならないほど、重い内的疾患に苦しむ方のほとんどが長年のよくない生活習慣ゆえに発病してしまったことがわかったのです。
端的に言ってしまえば、長年の不摂生な生活に対して、重すぎる代償を支払わねばならなくなったということです。
内部疾患を患った患者さんを否定したり、内部疾患によるリハビリを否定するわけではないですが、重い病の診断名がつく前に、理学療法士として何か、もっと、やるべきことがあったのではないか、と強く感じるようになったのでした。
内部疾患を患ってしまった患者さんには是非とも良くなっていただきたい。しかし、それ以上に内部に疾患に患わない、健康なままの身体でいるに越したことはないのでは……と思うようにもなります。
しかし、自分が働いている場所は病院で、健康保険が適応される内的疾患の患者さん以外に、リハビリや健康指導を行うことはできないのです。
診断名がついていない方には関わることのできない場所……そんな場で働きつづけることに私の中で疑問が生まれ、”病院の外”に関心を持つようになりました。
その結果、私の中で出された結論は、病院の外にも理学療法士の居場所はある、いや、「あるべきだ」という事実です。
そして実際に病院から飛び出し、mama salon aoyama(ママサロンアオヤマ)を運営し、多くの方たちと関わる中でわかったことは、『やはり病気になってしまう前にできることはたくさんある!』ということでした。
それは内科病棟で働いていたからこそ、そこで培った技術があるからこそ言えることであり、過去の自分や、私を育ててくれた患者さんたちには「ありがとう」と、感謝の言葉しかありません。
重い内部障害(内部疾患)にならないためには?!
重い内的疾患になって、苦しまないで済むにはどうしたらいいのでしょうか?
『正しい姿勢で1日を過ごし、1日に必要な栄養を摂り続ける』
シンプルですが、これこそが僕の座右の銘です。
しかし、この1日に必要な栄養を摂り続けること、これが非常に難しいのですね。
その理由としては、現代社会特有の食生活や、働き方が大きく影響していると思います。
だからこそ自分の大切な健康を守るためにも、正しい栄養の知識が必要だし、サプリメントについても賛否両論ある中、正しい知識が必要といえるのです。
また、仕事の仕方、1日24時間の過ごし方、身体の動かし方などなど、注意すべき点は本当に多岐にわたっています。
何もせぬままでは重病患者になってしまうかもしれない方にも、『正しい姿勢で1日を過ごし、1日に必要な栄養を摂り続ける』と伝え、導くことで、救うことができるかもしれない。
すくなくとも「患者」にはならない人生を送ってもらうことができる。
まだ病名がついておらず、患者にはなっていない方にこそ、理学療法士として様々なアプローチは重要なのです。
そして、そんな仕事を2021年の私はできるようになりました。成果も少しずつ感じられています。
病院勤務時代の悩んでいた自分に伝えてあげたい。『お前の想いは間違っていなかったぞ』、と……。
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