青山式「頭蓋骨調整」…脳脊髄液の役割について知ろう
「頭蓋(骨)は動いている」。そう言うと驚かれてしまうのですが、これは「おそらく」事実です。
頭蓋骨とは総称で、頭蓋骨全体でいえば28個の部分、頭部にあたる頭蓋部分は22個もの小さな骨のパーツが組み合わされ、できあがっているのです。
今回は具体的には頭蓋のお話なのですが、頭蓋よりも頭蓋骨と書いたほうが、みなさんにはより理解しやすいと思うため、頭蓋骨で統一させていただきますね。
頭蓋骨は動かない…という定説はホントなのか?!
さて、小さな骨と骨のパーツのつなぎ目を「縫合」と呼び、これらの部分が「脳脊髄液」を循環させる目的で、大きくなったり、縮んだりして動いているという仮説があります。
日本の解剖学では(成人の)頭蓋骨の縫合は「不動結合」とされ、動かないということが定説として、教科書などにも明記されています。しかし、外国の解剖学の教科書では、頭蓋骨は”動く”ものだと書かれているケースもあるのですね。
理学療法士として長年仕事をしてきた私は、自身の経験から、おそらく、頭蓋骨は不動ではないという結論に達しました。理学療法士として多くのお客様の身体の歪みに接していると、本当に頭蓋骨は「動かない」と教えていてよいのだろうか……と思うことが多々あるからです。
例えば、左側の腰痛を訴えてサロンにおいでになったお客様の例ですが、この方は骨盤が左後方に傾いており、その骨盤の傾きに伴い、脊椎全体も左に向かって歪みが発生していました。そして、その方の身体の左右非対称が、そのまま頭蓋骨の非対称につながっていました。左側へ傾きすぎている身体の”結果”として、頭蓋骨全体が左へ引っ張られていた例です。
こめかみ部分に手をあてて、ゆっくりと触っていくとよくわかるのですが、この方の場合は左側の頭蓋骨があまり動かず、右はその逆でした。「これではうまく脳髄液の循環が起きていないのかもしれない」と思わせられる状況でした。左側だけがあきらかに動きにくかったので、脳脊髄液のめぐりも悪くなってしまっているのだろうな、という状態だったのですね。
頭蓋骨は(大げさにいうと)ポンプのように膨らんだり、縮んだりして動くことで、脳内の脳髄液の循環を行っていると考えられるのですが、この方は身体の左右のバランスが崩れ、おそらく右側のみがよく動いている状態だと見受けられたのです。実際、頭痛や肩こり、不眠などの症状も訴えておられたので、必要を感じ、頭部も触らせていただきました。
当サロンで行っている他の身体の部位の施術とはことなり、医学的なエビデンスという点で不明瞭なところはあるのですが、この方は施術後、頭が軽く感じられるのと、「目がすっきりした!」というようなことをおっしゃっていました。
脳脊髄液(のうせきずいえき)が果たす役割
ここであらためて脳脊髄液とは何か、についてお話します。
脳脊髄液とは、脳と脊髄を包んでいる「硬膜」という膜の中にある、半透明の液体です。この液には、2つの大切な役割があります。
- 脳と脊髄を保護すること
- 脳と脊髄の周りを循環して、老廃物を排泄させること
の2点です。
頭蓋骨を構成する22個の骨の位置がずれてしまい、全体の組み合わせが歪んでいれば、脳脊髄液の循環機能も低下していると考えられます。脳脊髄液の流れが悪くなると、脳内に老廃物が貯まりやすくなり、脳機能が低下するのです。
その結果として、
- 頭痛
- 眼精疲労
- 不眠
- 動悸息切れ
- 低体温
- 手足のしびれ
など、自律神経の働きの乱れが原因して起きる、いわゆる自律神経失調症となってあらわれてくることがあるのです。
脳脊髄液の良好な循環のために
骨と骨の間にある『縫合』の動きを整え、綺麗に動くようにすることで、脳脊髄液の良好な循環を保つことができると考えられます。
脳脊髄液の循環を正常に保つために出来ることは?というと、全身の姿勢をバランスよく整えてあげることが一番の早道です。
脊椎・骨盤をはじめ、身体の歪みは何かしらの形で頭蓋骨にも影響しますからね。
ですから、身体の歪みを改善せずに「頭蓋骨だけ」を触っていても、理学療法的な観点からいえば、実のところほとんど何も解決しません。
脊椎・骨盤の歪みの解消が第一の目的であり、その後で(すべての歪みを治すべき)必要性が認められれば、頭蓋骨も調整…という流れがよいと考えています。
また、頭蓋骨を動かして調整と聞くと、かつて一部の整体業者が、頭蓋骨を動せば小顔になると謳ったことが問題視されたことを思い出した方も多いでしょう。その整体業者は「加齢によって、縫合線が開いて顔が大きくなる」とも主張しており、これはさすがに嘘だと言い切れる話です。こういうエセ科学の主張には是非とも気をつけて頂きたいものです。
巷の整体やマッサージの一部では、まるでシャンプーする時のように、頭皮を掴むように指を当て、ガシガシ・ワシワシと音が出るほど強く、揉みほぐしてしまうケースが見受けられたりします。これはたしかにやられているときは、気持ちよいものですが、終わった後、まるで乗り物酔いしたような気持ち悪さを感じる方も中にはいらっしゃいます(いわゆる「揉み返し」のような現象が頭蓋骨にも起きる場合があるため)。
頭蓋骨は想像している以上にデリケートな部分ですから、十分に気をつけてくださいね。
カラダの歪み調整は単一箇所の改善だけではなく全体調整を!
身体は頭からつま先までの様々な部位が、ひとつの”ユニット”として影響し合い、動いています。
このあたりは、過去記事『体はすべてつながっている?!治療の現場を変えた「アナトミー・トレイン」とは』や『怪我は治ったはずなのに身体の調子がよくならない本当の理由 <ボディイメージについて知ろう!>』でも触れましたが、身体の一部分に障害が起きると、それを庇(かば)うために、別のつながった場所に影響がでるようになっています。
したがって、障害が出ている単一部位の施術ではなく、カラダ全体の調整をすべき…というのが私青山の考えでもあります。
ですので、カラダ全体の歪みの改善を契機にして、頭蓋骨の調整も考えてみる…という段階を踏むのが良いように思います。
自律神経失調症と医院で診断され、治療中だけれど、改善した感覚が薄い方や、医院に行くほどではないが
心身の不調がなんとなく続いてしまっている方も、通常の施術にプラスする形で、頭蓋骨の施術を受けてみるとよいかもしれません。
私の理学療法士としての経験と知見が、みなさまの健康維持に役立てば幸いです。
頭蓋骨単体での施術も可能ですが、あまりオススメしておりません。カラダのあちこちは繋がっており、関与しあっているため頭蓋骨のみを施術するだけでは効果が薄く、頭蓋骨を含めたカラダ全体の歪みを修正する必要がある…と考えているためです。 |
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