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障害部位への固執から俯瞰する治療へ <若かりし頃の施術失敗談>

みなさん、こんにちは! 理学療法士の青山遥(アオヤマヨウ)です。

練馬区豊島園で理学療法サロン『AOYAMA STYLE(アオヤマスタイル)』を営んでおります。 

約12年間の総合病院での理学療法士としての臨床経験をベースに、「快適な生活は正しく食べて、正しい姿勢から!」をモットーに、姿勢の修正や運動療法(いわゆるリハビリ)、そしてその方の職業や生活にあったセルフケア指導を行うことで、お客様に元気になっていただくお手伝いをしております。

「医者は患者さんに育ててもらう」などといいますが、理学療法士もそれは同じです。理論を学び、技術を身につけただけでは、一人前にはなれません。

若かりし頃の失敗

病院勤務時代、特に新人だった頃に私がよく犯していた失敗があります。

それは、

『患者さんの身体の問題点探しに固執してしまった』

ということです。

あらゆる身体の支障には、原因があるものです。

こういうと自慢に聞こえるかもしれませんが、患者さんの身体が、うまく動かなくなってしまった原因をつきとめることーーーつまり、「犯人探し」は誰よりも自分がうまいぞ、という自信が若い頃の私にはありました。

しかし同時に、その原因をつきとめ、問題箇所の治療だけを行っても、症状が良くならないという事態に直面することがたいへん多くあったのです。

これを読んでいただいている方の中にも、鍼灸院、整骨院、マッサージ……さまざまなボディケアのお店に通った経験があるよ、という方はたくさんおられると思います。あるいは総合病院に通っているというのでもよいのですが、「身体のどこそこが原因で、その症状がでている」と専門家に診断され、治療も受けたのに、イマイチ改善が見込めなかったという方もたくさんおられると思います。

患者さんと施術者の相性とおおまかに語られることも多い問題です。しかし、その問題の理由をより突き詰めて考えれば、施術者の側にも問題があった。たとえば『患者さんの潜在的な課題を探すのが上手くなかったから』かもしれません。

若かりし頃の私も、患者さんの身体のエラー箇所を探し当て、そこだけを徹底的に治そうと奮戦していました。しかし、そこだけの治療で効果が見込めるかどうかは、症状によるんですね。

麻痺の症状を持つ患者さんへのアプローチ

たとえば、右の手足が脳梗塞後の麻痺で動かなくなった患者さんを私が担当したとしましょう(ちなみに麻痺で手足が動かなくなった状態を、専門用語で痙性、筋緊張亢進などといいます)。

今の私であれば、その麻痺した部位のリハビリを行う前に、麻痺が出ていないーーーつまり現時点で動かすことができる左手足や体幹の潜在性の評価と治療を優先すべきだと考えます。

麻痺した部位を動かして、その方はこれからの日常生活を送るのではありません。すくなくとも、最初は麻痺が出ていない身体の部位を主に使って、生きていかねばならないからです。

残念ながら、現代の医学の水準では麻痺が出てしまった手足を完璧に治す事は困難です。だからこそ集中的なリハビリが必要という考えもありますが、逆に、そういう重大な支障が見られる部位のリハビリばかりに固執することは、優先度が間違ってはいないか、と私は考えるに至りました。

このようにハッキリ言ってしまうと、リハビリに携わっている方たちからすると賛否両論があるかもしれません。

しかし、まったく動かない、もしくは非常に動きが制限されてしまっている部分に集中的なリハビリを行い、少しでも治そうとするより、今も動く身体の部位の潜在能力はどれくらいあるのかを測定し、その部分が動かない部分をどれだけカバーできるかを探ることのほうが大事ではないか、と今の私は考えているのです。

こう考えることには利点があります。そのような観点からケアした場合、麻痺が出ていない手足や体幹の正しい使い方を覚えられ、また、麻痺が残ってる中でも歩きやすくなった、寝返り・起き上がりがしやすくなった、と患者さんに喜んでもらいやすくなるのです。

軽い腰痛、ちょっとしたケガでもなんでもいいのですが、身体を少しでも悪くしたときのことを思い出してください。普段なら本当にどんな気軽な動作ひとつにも、身体の多くの部分が反応しあっている事実に気づかせられるものです。

元気な身体であれば、意識しろ、といわれても気づくのはなかなか難しい事実ですが、たとえば浴槽をまたぐこと、トイレ時のズボンの着脱などでさえ、かなりの全身運動だったりするのです。身体の片側に麻痺が出てしまうことは、これらのきわめて日常的な動作さえ困難になってしまうことを意味しているのです。

しかし、身体の片側に麻痺が残っている状態でも、麻痺が出ていない部位の動かし方をただしく覚え、実行していただくことで、QOLが大幅に改善することはよくありました。

麻痺という重い症状のお話を例として出しましたが、麻痺以外でも、様々な身体の部位や症状でも、この考え方は有効です。

『主症状の根本的な原因や、問題を起こしている部位があったとしても、それが治療困難であればあるほど、それ以外の治せるとこは先に治してしまう』

そうすることで結果的に困難な主症状の改善に、最速・最善でつながるケースは実に多いのです。

つまり、「急がば回れ」になってしまったとしても、『患者さんの潜在性(ポテンシャル)を探すのが最優先』なのです。

ママサロンでも引き継いでいる障害部位”だけ”に固執しないアプローチ法

より日常的な身体の症状を例にお話してみましょう。当サロンに通われるお客様には、首の問題を抱えておられる方がたくさんおられます。しかし、首の支障は、首だけを治そうとしても治らないことのほうが多いものです。

そして、頸椎の歪みの根本的原因は、案外、違う部位にあったりすることがほとんどです。それに施術者が気づけるかどうかは、治療を行う上でとても大切なことになります。

だからこそ、支障が出ている首にだけこだわってはダメなのです。この方の身体で、まだ歪みの少ない、つまり健康潜在性(ポテンシャル)の高い骨盤や腰椎、足関節などを先に治療していくことで、「勝手に」頸椎のひどい歪みも治るというケースがとても多いのです。

もし、ひたすら頸椎の修正をめざし、そこにだけに固執して、「これでもか! これでもか!」式に、ありとあらゆる手法を使って『首のみ』にアプローチしていたらどうなっていたでしょうか。

ほとんどの場合、かえって悪化させてしまっていたのではないかと思います。

もしかすると、これを読んでいる方の中には「悪いといった箇所を治そうとせず、違うところばかり触ろうとするから、その人の施術を受けに行くのを止めた」という方がおられるかもしれません。しかし、その施術者は、私と同じような身体の理解にもとづき、あなたのリハビリを行おうとしていたのかもしれませんよ。

「身体のどこかが具体的に悪くても、そこだけを集中的に治療するだけでは効果がでないことは案外多い」のです。当サロン以外でも施術を受けるときの心構えのひとつとして、頭の片隅にいれておいていただけるとよいと思います!

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